日本のエンターテイメント業界の最前線で戦い続ける人物に話を聞く連載『ギョーカイ列伝』。第6回に登場するのは、『ゴッドタン』などで知られる、テレビ東京のプロデューサー / 演出家の佐久間宣行。数多くの人気企画やニューヒーローを世に送り出してきた『ゴッドタン』では、『キス我慢選手権』の映画化も記憶に新しいが、先日は『マジ歌選手権』から派生した『マジ歌ライブ』を日本武道館で開催。深夜番組のイベントとしては、異例の規模だったと言っていいだろう。
今回の取材では、佐久間のポップカルチャーに対する愛情についての話を軸に、いかにして『ゴッドタン』が出演者からも視聴者からも10年間愛され続ける番組となり、様々な企画を成功させることができたのかをじっくりと伺った。また、4月からレギュラー放送が復活する、千鳥の冠番組『NEO決戦バラエティ キングちゃん』について、さらには、視聴率や労働環境など、今のテレビ業界を巡る様々な問題についても、率直な意見を述べてもらった。
いろんな音楽シーンのあるあるを詰め込んで作っていくことに、喜びを見出したんですよね。
―『ゴッドタン』の人気企画『マジ歌選手権』から派生したライブイベント『マジ歌ライブ』が、3月16日に日本武道館で開催され、大成功を収めました。番組のスタートから10年が経過して、これだけ愛されるコンテンツになった理由をどうお考えですか?
佐久間:僕ら作り手が飽きてなかったからだと思います。毎回新鮮で、面白味があって、スタジオで声を出して笑えるものを目指して作ってるから、コンテンツがフレッシュなまま続けることができたのかなと。
お笑いって、フレッシュさがなくなるとどんどんほころびが出てきて、気づかないところから錆びちゃうんです。『ゴッドタン』でやってるどんな企画も、出演者がちょっとでも飽き始めたと感じたらスパッとやめているし、長寿企画はあえて1クールに1回とかしかやらないんですよ。
『マジ歌ライブ2017~マジ武道館~』より。東京03、おぎやはぎ、バナナマン。©テレビ東京
『マジ歌ライブ2017~マジ武道館~』より。東京03角田。©テレビ東京
『マジ歌ライブ2017~マジ武道館~』より。スピードワゴン。©テレビ東京
―『マジ歌』に関しては、お笑いと音楽の相乗効果がフレッシュさを保つ秘訣にもなっているのかなと。
佐久間:そうですね。最初は「芸人さんがマジで歌を作って歌うのが面白い」って企画だったんですけど、もともと僕が音楽好きというのもあって、いつの間にか、いろんな音楽シーンのあるあるを詰め込んで作っていくことに喜びを見出したんです。「ヒップホップのラップから歌に変わる瞬間って、ダサくやると面白いよね」とか、その年の音楽シーンのあるあるとかを入れていくようになって、企画がさらにグレードアップしていったような気がします。
―なおかつ、その取り入れ方に「イマ感」があるというか。最近だとバナナマン日村さんが水曜日のカンパネラを、バカリズムさんがSuchmosを、さらに先日の武道館では劇団ひとりさんがもう『ラ・ラ・ランド』をネタにしていて、早いなと思いました。
佐久間:確かに、そうですね。去年、打ち合わせでSuchmosの話をしたときは、僕とバカリズム以外知らなかったですから。でも、それをやっちゃうのがうちの番組っぽい。
『マジ歌ライブ2017~マジ武道館~』より。バナナマン日村。©テレビ東京
『マジ歌ライブ2017~マジ武道館~』より。バカリズム。©テレビ東京
クロスカルチャーして、そこで面白いものが生まれたほうが、絶対にお互いにとって得な時代だと思います。
―バカリズムさんは『バズリズム』(日本テレビ系)をやってたり、バナナマンさんは『バナナ♪ゼロミュージック』(NHK総合)をやってたり、お笑いと音楽の関係が新たな局面に入っているような印象も受けます。
佐久間:『バナナ♪ゼロミュージック』に関しては、もともと『紅白歌合戦』のスタッフの方が『マジ歌』の大ファンで前のライブを観に来てくれて、そこからバナナマンさんが『紅白』の副音声をやるようになって、2年前の『紅白』ではmiwaさんの曲に「ヒム子」(バナナマン日村の『マジ歌』内のキャラクター)が入っていく演出をやったんですよね。そのスタッフの方が『バナナ♪ゼロミュージック』もやってるので、『ゴッドタン』がそのきっかけになったというか。
―テレビ東京の『ゴッドタン』で生まれたキャラクターがNHKの『紅白』に出たり、そういうオープンな姿勢もフレッシュさを保つ秘訣のひとつだったと言えるのでしょうか?
佐久間:そうかもしれないですね。昔は「この番組のユニットは他の局に出ちゃダメ」とか、そういう縛りもあったらしいんですけど、もうそういう時代ではないと思うんです。
クロスカルチャーして、そこで面白いものが生まれたほうが、絶対にお互いにとって得な時代だと思います。日村さんが水曜日のカンパネラをやったときも、Twitterでコムアイさんが超喜んでくれましたからね。
バナナマン日村さんにネタにしてもらえた
— コムアイ KOM_I (@KOM_I) 2017年1月4日
くそ最高もっとモノマネしてもらえるように頑張る!まじ…っ嬉しい!!!!!
「世界変えたい!ヒム子も変わりたい!」
天才… pic.twitter.com/WKdskJ3YDR
―『ギョーカイ列伝』の連載をやっていて、既得権益を守ることに固執するのではなく、オープンな姿勢で外側と緩やかに繋がることは、今の時代、どの業界においてもとても重要なことだと感じます。
佐久間:ネットは自分の趣味からキーワードが出てくるから、深掘りはできても、好きじゃないものとの出会いがあまりないと思うんです。でも、テレビはランダムに見ることが多いじゃないですか? 僕は昔フジテレビの深夜番組とかが好きで、そこで「この劇団、なんて言うんだろう?」とか調べて、ポップカルチャーを好きになっていったんです。
なので、その頃の古きよき感覚というか、いろんなものを好きになってもらうきっかけを自分の番組でも作りたい。それは芸人さんだけではなくて、役者さんもそうだし、それこそ、『マジ歌』からSuchmosを知った人が「アルバム買いました」って言っていたりすると、すごく嬉しいんですよね。
『ゴッドタン』のスタッフのなかだと、僕がダントツで芝居も映画も観てるんです。
―成功の一方で、番組を続ける上での苦労というとどんな部分がありましたか?
佐久間:やっぱり、毎回新しい企画を考えるのって手間がかかるんですよね。フォーマットを決めて、たとえばクイズならクイズを毎回やったほうが、ずっと楽なんです。なので『ゴッドタン』を10年間やってきたなかでも、スタッフのモチベーション的に「これ続けていけるのかな?」と思ったことはありました。
ただ、それも結局企画で乗り切ったというか、「他がやってないことを思いついたから、世の中の人に見てほしい」という想いで、いろんな条件の悪化を最終的に乗り越えてきた気がします。あとは、三四郎とか、小池美由ちゃんとか、番組発で売れっ子が出てきてくれると、やっていてよかったなって思うんですよね。
―「企画」というのは、普段どうやって発想されているのですか?
佐久間:企画の作り方は、いくつかあるんですよね。人気者の場合、たとえばロバート秋山くんとか有吉くんとかだと、他の局でやってないことだけを考えていくと、それがそのまま企画になったりする。あとは、世の中で「みんながすごく盛り上がってるのに、なんで俺だけ盛り上がれないんだろう?」とか「みんな怒ってるけど、別に俺は怒ってないな」とか、そういうたまにある違和感をメモしておくと、それが企画になったりします。
あとは、ポップカルチャーを観に行って、そこで思いつくことが多いですね。このあいだも、たまたまいくつかの舞台で、童貞の役をやる役者を何人か立て続けに観て、「芸人が童貞の頃の気持ちを忘れてないか、演技で競うというのを番組企画にできないかな」と思ったりとか(笑)。
―『ゴッドタン』はニューヒーローを多数輩出している番組でもありますが、新しい人材はどのように見つけてくるのでしょうか?
佐久間:それも自分で観に行って見つけることが多いです。最近は、ロロ、ベッド&メイキングス、玉田企画、アガリスクエンターテイメントという劇団を、それぞれ小劇場まで観に行きました。やっぱり、自分で探して面白い人に出会うと嬉しいんですよ。
『ゴッドタン』のスタッフのなかだと、僕がダントツで芝居も映画も観てるんです。なので、会議のなかで毎回10~15分くらい、「これ観たほうがいいよ」って僕が言って、翌週観に行った人が「あれ面白かったです」ってなって、そこから企画が生まれたりします。
―そうやってお忙しいなか観に行くのって、「好きだから」という理由と、「仕事のため」という理由と、その比率ってどれくらいですか?
佐久間:「仕事のために観に行く」という感覚は、ほぼゼロですね。ホント申し訳ないんですけど、知ってる人が出演していても、つまんなそうだったら行かないんで(笑)。だから招待でも自腹でも、行くのはほとんど「面白そうだな」という理由です。
1日であれだけの出演者が出たら、絶対に儲からないです。
―成功の裏側にある苦労という話でもうひとつお伺いすると、武道館での『マジ歌ライブ』には番組で活躍した人が総出演していて、収益性があるわけではないと思ったんです。
佐久間:ライブを作っていらっしゃる方ならわかると思うんですけど、1日しか公演をやらないのに、あの演出で、あれだけの出演者が出たら、絶対に儲からないです。DVDが売れてくれることを祈るだけですね(笑)。
―『マジ歌選手権』の企画自体は、最初からライブを想定してスタートしたものだったのですか?
佐久間:いや、ライブに関しては提案をもらって、最初は「え? ホントにできるのかな?」という感じでした。ただ、1回目の準備をしてる途中で、「これは『マジ歌選手権』と同じ理屈で作ればいいんだ」と思ったんですよね。要は、『マジ歌選手権』が音楽シーンのあるあるなら、『マジ歌ライブ』は音楽ライブのあるあるなんです。
MCで一言しゃべって、「それでは聴いてください」って、ミュージシャンがやるとかっこいいけど、それを突き詰めるとコントになる。そういうことに気づいてから、ライブアレンジのなかにどうコメディー色を入れていくかを考えるようになりました。後藤さん(フットボールアワー)が「ジェッタシー」って言って、火花がバンって出るのも、ホントはかっこいい演出なはずなんですけど……なんであんなにダサくて面白いのかな(笑)。
『マジ歌ライブ2017~マジ武道館~』より。フットボールアワー後藤。©テレビ東京
―収益性が高くなくても、『マジ歌ライブ』を開催する一番の理由はなんでしょう?
佐久間:普段のテレビって、視聴率のグラフでしか反応がわからないじゃないですか? でも、ああやって年に1回でも実際に会える場所を作ると、スーツ姿の人がたくさんいるんですよ。『ゴッドタン』のファンって、一緒に歳をとってきた30代が多くて、そういう人たちが仕事を早めに終わらせてきて、ゲラゲラ笑うことで日々の活力になるなら、もっと頑張りたいって思う。1年に1回、お互い生き延びてまた出会うっていう、そういうのはすごくいいんですよね。
気づいたら、お笑い番組自体がほぼなくなってるんです。
―『ゴッドタン』の一方で、4月からは昨年好評だった『キングちゃん』のレギュラー放送が再び始まりますね。
佐久間:『ゴッドタン』の場合は、企画をやりながらどんどんポップカルチャーの要素を入れて、クオリティーを上げていく作り方をしているんですけど、『キングちゃん』はそうではなくて、千鳥っていう30代半ばの「今」の芸人さんに、「現場で頑張らなかったら、撮れ高ゼロだよね」って企画をわざとやらせるんです。『ゴッドタン』が文化祭なら、『キングちゃん』はお笑いの運動会をやらせてる感じ(笑)。なので、芸人さんは大変だと思います。
―逆に言えば、芸人さんにとっては非常にやりがいのある番組で、実際に千鳥さんも番組に対する愛を語っていますよね。
佐久間:自分たちが冠で、お笑いだけで30分番組をやるって、言ってみたら、芸人さんはそれがやりたくてこの業界に入るわけですよね。千鳥にとってその機会を作ってあげられたのは、すごく嬉しいです。
―『キングちゃん』の復活に対しては、ファンの熱も相当高かったそうですね。
佐久間:すごかったです。終了したとき、テレビ東京宛に届いたメールが爆発的に多くて、局内の編成の人もびっくりしてました。視聴者の声って、ホントに効果あるんですよ。
―番組がそれだけ支持された理由についてはどうお考えですか?
佐久間:気づいたら、お笑い番組自体がほぼなくなってるんです。自分としても、もともとお笑い番組が好きだったので、それを守りたいという気持ちもあります。
―お笑い番組が減った原因は、やはり数字の問題でしょうか?
佐久間:そうでしょうね。高齢化が関係しているのは確かだと思います。それに影響を受けているのは、テレビだけではないですけど、テレビの視聴率を測るのはリビングなので、今の測定方法だとメインターゲットが高齢層になってくる。
たとえば今の野球って、打率と打点だけではなくて、OPS(出塁率と長打率を足し合わせた値)という数値でバッターを見るんですよ。テレビだと、今、総合視聴率というのが出始めてるんですけど、テレビは広告ビジネスだから、最終的に広告効果を上手く測れる指標が必要。そうじゃないと、たとえば兼業主婦だったり、そういう人たちをオミットした番組作りをせざるを得なくなってしまうんですよね。
―音楽業界も、かつてはオリコンが集計するCDの売り上げが唯一の指標でしたけど、今はもっと多様な指標が必要になっていますし、どの業界でも同じことが言えそうですね。あとお笑い番組が減ったもうひとつの理由としては、コンプライアンスが厳しくなっている、ということもあるのでしょうか?
佐久間:それもテレビだけの問題ではないなと思います。SNSでも、ちょっとはずれたことを言うとすぐに炎上するし、「面白くない」と思った映画のことを書いただけで、「傷つきました」というコメントがくるし。日本全体に被害妄想ムードがあるし、ふつふつとした怒りをどこにぶつけたらいいかわからない、という状態になってるんでしょうね。
だから、テレビでちょっとなんかあったときには、「やめさせろ!」って意見が飛んできたりするんです。でも、コンプライアンスとか表現の規制に関しては、別にテレビだけがやりにくくなってるということではないなと思います。
自分の生活リズムと心の逃げ場を持って、人生を楽しんだほうがいいですよ。
―業界の「働き方」についてもお伺いしたいと思います。昨今、労働環境が話題になることが増えて、テレビ業界も「休めない」「寝れない」というイメージがついているように思うのですが、以前佐久間さんが別の取材で「週一で休んでるし、徹夜はほぼしない」とおっしゃっているのを見かけて、ぜひ「働き方」についてお伺いしたいと思ったんです。
佐久間:ちゃんと寝たほうがいい企画思いつきますからね。寝ないで頑張って、クオリティーが上がったためしがないです(笑)。まあ、そこに気づくまでにはちょっと時間がかかったし、自分はたまたま趣味と仕事が直結してるから、そんなにストレスを感じることってないんですけど。
でもやっぱり、自分の生活リズムと心の逃げ場を持って、人生を楽しんだほうがいいですよ。自分のルサンチマンをぶつけて仕事をしても、ろくなことないと思います。「楽しみを共有する」という感じで作るほうが、伝わるなって思いますね。
―佐久間さんも若い頃は寝ずに頑張っていたわけですか?
佐久間:そういう時期はそういう時期で大事だと思うんです。今でも不安はなくならないけど、20代の頃なんて、「自分が世の中の人に面白いと思ってもらえる番組を作れるのはいつになるんだろう?」ってずっと思ってたし、やっぱり同期より先にそれを作りたいし、20代のうちにしか作れないものを作りたかったし。だから、寝ずに企画書を書いたりもして、それがよかったところもあったと思うけど……まあ、寝ても書けたとは思います(笑)。
この業界にいる同年代を見ていて、一個だけ自分のほうが有利だなって思うことがある。
―20代の頃は、まだ時間の使い方が上手くなかったけど、今は時間の使い方を覚えて、それこそ小劇場にも足を運ばれたりしているわけですね。
佐久間:今41歳なんですけど、この業界にいる同年代を見ていて、一個だけ自分のほうが有利だなって思ってることがあって。僕は、インプットを続けてるから、アイデアが枯れないんです。僕より才能のある人はいっぱいいると思うんですけど、いざ「さあ、好きなものを作ろう」ってなったときに、学生時代に好きだったものから発想して作るしかない人が多いんですよ。
インプットをしてないと、徐々にクリエイティブのスタミナに差がつくと思うんですよね。だから、ちゃんと自分のスケジュールを管理して、クリエイティブの接収をしたほうが、末永くやれると思います。
―インプットを続けていることも、フレッシュさを保つ大きな秘訣なんですね。
佐久間:どこかでインプットを遮断して、自分のなかにあるものと向き合う時期もあるだろうし、天才と呼ばれる人たちは、そうやって作ってるんだと思います。ただ、僕はいろんなポップカルチャーを吸収して、その情報の海のなかから刺激的なものをすくい上げて企画を作るほうが好きで、それをみんなに見てもらって、「これって、ここの劇団なんだ」ってなったらいいなという想いが強いんです。
―実作業としての編集もお好きだそうですが、発想自体が編集的な感覚なんですね。
佐久間:それはありますね。僕らはDJとかが始まった頃の世代の人間だから、引用することに抵抗がないというか、パクリだとは思わない文化で育ってるんですよ。
―DJカルチャーであり、渋谷系であり、世代的に編集感覚が身についていて、言ってみれば、『マジ歌』というコンテンツも、まさにそれが形になったもの。
佐久間:そうだと思います。昔のテレビにはパロディーコントがいっぱいあったじゃないですか? とんねるずさんが『北の国から』のパロディーをやっていたり。あれは古きよきもので、その要素が『マジ歌』にはちょっと残ってると思うんですよね。
古い頭の人も多い業界だから、野心があって、頭のいい若い人は、簡単に抜けると思いますよ(笑)。
―この連載記事はCINRA.NETとCAMPFIREの合同企画なのですが、佐久間さんはクラウドファンディングについて、どのような印象をお持ちですか?
佐久間:『この世界の片隅に』(片渕須直監督、2016年公開。製作費やプロモーション費の一部を、クラウドファンディングにて調達)と、西野(キングコング)がやってることくらいしか知らないんですけど……でも、今の時代のやり方としては面白いと思います。要は今の時代、一個の作品を作るときにシェアしていく喜びがあったほうがヒットするので、出資という形で作品を我がことにしてもらえるのは、作品作りにおいて意義のあることだなと。
SNSとかって、強い作品を作ると、いつの間にか応援団みたいなものがついてくるじゃないですか? それに近いことがクラウドファンディングで起きているんだろうなと思います。実際、『この世界の片隅に』の出資者の人とか熱かったですしね。
―『キングちゃん』が復活したのも、ファンの熱によるところがひとつの要因だったわけですもんね。
佐久間:そうですね。あとは単純に、クラウドファンディングがあるおかげで、これまで日の目を見なかったような小さい企画が実現するのは、面白いもの好きの人間としては嬉しいです。どんなものであれ、できあがってくれたほうがいい。そのなかに天才がいるかもしれないですから。面白いものがなくなるより、増えたほうがいいので、そういうきっかけになってるのは、すごくいいなって思います。
―では最後に、エンターテイメント業界に入りたいと思っている人、また興味はあるんだけど、業界の未来に不安も感じている人に対して、なにかメッセージを伝えていただけますか?
佐久間:僕はもともと、番組を作るような人間ではないと思っていて、就職活動のときにテレビ局を制作で受けたのって、テレビ東京だけなんです。こういう仕事をする人は、学生時代からものを作ってる人だと思い込んで、メーカーとか商社ばっかり受けてたんですよ。
でも、テレビと掛け合わせることができる面白いものを持っていれば、全然大丈夫だったんですよね。昔よく先輩に言われてたんですけど、自分のスウィングが見つかったら、そのスウィングをちゃんと磨いておくと、いつか世の中にはまったときに爆発力が出る。僕はそれを信じてやってきました。才能なんてよっぽどの人じゃない限りないし、やり方次第で勝てると思うので、臆せず飛び込んできてほしいと思いますね。
―途中で指標の話があったように、変化の時代だからこそ、若い人にも可能性があるのかなと。
佐久間:そうですね。今はネット配信も増えてますけど、一斉に大量の人に届く媒体としては、未だにテレビの地上波が一番だと思うし、製作費や関わる人の面白さも、まだテレビが一番だと僕は思います。なので、映像で面白いことがやりたかったら、まず一回テレビに入って、そこでノウハウを学んでから、他で生かしてもいいと思う。
―テレビ業界には、吸収できる資源が大量にあるよ、と。
佐久間:そうですね。そのわりに、今の時代にアップデートできてる人間がそんなに多くなくて、古い頭の人も多い業界だから、簡単に抜けると思いますよ(笑)。野心があって、頭のいい若い人にとっては、ブルーオーシャンに近いんじゃないかな。「昔はよかった」的な脳の人がたくさんいて、恐竜みたいになってるから(笑)。自由にできるし、すごくチャンスだと思いますね。
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群衆(crowd)から資金集め(funding)ができる、日本最大のクラウドファンディング・プラットフォームです。
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- プロフィール
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- 佐久間宣行 (さくま のぶゆき)
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テレビ東京のプロデューサー、演出家。1999年入社。『ゴッドタン』『キングちゃん』『おしゃべりオジサンと怒れる女』『ご本出しときますね?』『ウレロ☆無限大少女』『SICKS〜みんながみんな、何かの病気〜』『共感百景』『ピラメキーノ』『有吉のバカだけど…ニュースはじめました』『キンコンヒルズ』『相談バカ一代』『潜入捜査アイドル・刑事ダンス』などを担当。
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