山口小夜子と高木由利子の「蒙古斑革命」プロジェクト、ウェブサイトが復活

山口小夜子と写真家・高木由利子による「蒙古斑革命」プロジェクトのティザーサイトが公開。

2005年から2年間にわたって雑誌『ソトコト』に連載された「蒙古斑革命」は、山口小夜子がインタビュアーを務め、高木由利子が撮影を担当したプロジェクト。現代の日本に生きる人々の美意識を探るため、32人の人物にフォーカスした。同プロジェクトのウェブサイトは以前存在していたが、山口小夜子の急逝と同年となる2007年にサーバーのトラブルによって全データが消失。その後は閲覧不可となっていた。

ウェブサイトの「復活」は現代美術家でホーメイ歌手の山川冬樹、晩年の山口小夜子とパフォーマンス活動を共にした演出家・生西康典、有志らによって実施。インタビューの記録映像、誌面の原稿などから情報を起こし直したという。

本日9月1日にティザーサイトが公開され、あわせて高木由利子、山川冬樹、生西康典によるコメントも発表。本サイトは山口小夜子の誕生日である9月19日にオープンする予定だ。

連載時に登場した人物は、伊東篤宏、Candle JUNE、灰野敬二、田中洋介、山川冬樹、八木美知依、森田志保、仲西祐介、津村耕佑、A.K.I.、浅野順子、KUJU、MAYA、堀つばさ、松本俊夫、Lui、生西康典&掛川康典、エキソニモ、長屋和哉、永戸鉄也、BOO、ヴィヴィアン佐藤、作者、横尾美美、下村一喜、林英哲、UA、中村明一、鍋田智久、栗原佑実子、黒田育世、鈴木清順。

高木由利子のコメント

ある日小夜子から電話があり、私たちは熱く語った。東洋人である我々日本人の美意識をあらためて探り、私たちの周りにいる”格好いいエッジな人々との出会い”を記録に残そうということになった。そのプロジェクトを”蒙古斑革命”と名付けた。
小夜子がインタビュアーとなり、私が撮影を担当して、雑誌で2005年から2年間連載した。ウェブサイトで出会った無名の若者から、90代の映画監督に至るまで、総勢32名の人に登場していただいた。
プロジェクトの立ち上げ当初から参加してくれた山川冬樹が、雑誌の紙面には納まりきれないメッセージをウェブサイトでも発信することになった。だがある日突然、サーバーのエラーのために、全データが消え、蒙古斑革命は途絶えた形となった。
そして、小夜子も2007年の夏に天に召され旅だった。
それから10年の年月が経った。混乱しきった地球上で、アイデンティティーを見失い、東洋人として、日本人として、今世の使命を見出せずに彷徨っている人々。少しでも、勇気と何らかのメッセージを送ることができれば、と願うようになり、貴重な記録を再現し、蒙古斑革命のタイムレスな精神を世の中に発信し続けたいと思った。
山川冬樹、生西康典、星野圭一、篠原敏蔵の惜しみない協力により、ウェブサイトの再起動が可能となり、今新たに多くの人が蒙古斑革命の精神に触れる場が登場する!

山川冬樹のコメント

「山口小夜子」というと、とかく日本的なアイコンとして語られることが多い。しかしそれは間違いだ。実際に小夜子がもっていた美への熱望というのは、決して「日本」という狭い枠組みに収まるものではなかった。彼女にとっての「日本」とは、戦後高度経済成長期に宿命的に纏うこととなった衣装の一つに過ぎず、それはいくらでも着替えたり、コーディネートしたり、リメイクすることが可能なものだった。
極東の島国からヨーロッパまでをまたにかけて活動した彼女の本能は、常に「日本」という狭い枠を超えて広大なユーラシア(Euro+Asia)に向いていた。「山口小夜子」とは、東洋/西洋、オーバーグラウンド/アンダーグラウンド、大人/少女、女/男、光/闇…あらゆる対極的なものが相互に反撥しあう力を養分にして咲く、妙麗なる大輪の華だったのである。
一人の人間としての小夜子は非常に研究熱心で、好奇心旺盛な人だった。とりわけ「人」への興味は尽きることがなかった。ある時、彼女が由利子さんと雑誌の連載企画を立ち上げるから一緒にやろうよ、と誘ってくれた。二人の琴線に触れた「美しい人たち」を、彼女自身がインタビューしながら毎月紹介する企画だという。タイトルは『蒙古斑革命』。十代の終わりもしくは二十代の初め頃のものだろうか、彼女の遺品の中に自らの琴線に触れた千姿万態の人物イメージをべたべたと糊付けしたスクラップ・ブックがあるのだが、今みると『蒙古斑革命』はそれにとてもよく似ている。『蒙古斑革命』でのスクラップ・ブック風のエディトリアル・デザインは由利子さんの手によるものだったが、由利子さんが小夜子のスクラップ・ブックのことを知る由もない。やはり二人は無意識に通じ合っていたのだろう。
この度、小夜子と由利子の二人が企てたこの小さな革命が、その精神を受け継ぐ有志の手によって、アーカイヴサイトとしてここに復活することとなった。革命の影の共謀者としてこれほど嬉しいことはない。この場を借りて感謝申し上げたい。

生西康典のコメント

今の世に再び蒙古斑革命が静かに立ち上がること。
生きている間は、その人が生きて来た道筋は、なかなか見えてことないものだが、亡くなって時間が経つと、誕生から死まで、一筋の光のように観えて来ることがある。小夜子さんの生きて来た光の道。光の道は彼女が亡くなったことで、途切れたりはしない。その先を見通すことは、ぼくには出来ないけれども、遥か未来に向けて、光の束のように、たくさんの可能性がその先に開けている。
いま多くの国で拝外主義、右傾化が進んでいる。蒙古斑に誇りを持つことは、自分の根源を探ることでもある。ぼくたちの根源をたどっていくと、それは決して国家という小さな枠におさまるものではないだろう。あらゆる人種、文明、文化は複雑に絡み合い、どこかで繋がっている。人間だけではなく、あらゆる生命、物質は、どこかで繋がっている。
真理について考えている時間が一番好なのと言っていた小夜子さん。小夜子さんは、とても大きなスケールでものを考えていた人だった。ぼくたちは遊び場のような小さな場所で、舞、朗読、映像による表現の実験を繰り返していた。
ひとりひとりの人間の力は本来とても小さい。でも、その小さな力のなかにこそ、かけがえのないものがひそんでいると信じている。いま、このタイミングで小夜子さん、由利子さん、山川さんたちがつくっていた蒙古斑革命のウェブサイトが、ホシノくんや、しのっぺんさんたち、有志によって、静かに立ち上がることの意味を感じている。

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