Awesome City Clubはネクストステージへ。日比谷公園で胸中語る

公開インタビューと、二人だけのアコースティックライブを開催

去る8月19日と20日、日比谷公園・にれの木広場で開催されたCINRA主催のカルチャーイベント『NEWTOWN』。このうち20日夕方に行われた『Awesome City Club × VROOMスペシャルトーク&ライブ』では、Awesome City Club(以下、ACC)のatagi(Vo,Gt)とPORIN(Vo,Syn)が登壇。VR映像コンテンツ「VROOM」とのコラボで制作された“ASAYAKE”のVR映像や最新の活動に関する公開インタビュー、二人によるアコースティックライブが展開された。

まずは、8月23日に初のベストアルバム『Awesome City Club BEST』をリリースするACCに公開インタビュー。聞き手はデビュー時からCINRA.NETにてACCを取材してきたライター・金子厚武が務めた。メジャーデビュー以降の2年半の活動を振り返って、二人はこう語る。

atagi:ずっとマルチタスクな2年半でしたね。音源を作るのと、ツアーと、プロモーションと、やることが二重三重に折り重なってたから。

PORIN:今までの人生の中で一番濃かった。常に前を向いて歩いてきて、あまり覚えてないくらいなんですけど、ベストアルバムを出す今、やっと落ち着いてバンドのことを考えられる時間ができてるなという感じです。

atagi:うん、今は一皮むけるタイミングというか、自分たちの中でブレイクスルーするポイントなんでしょうね。

PORIN:このあいだ、『RISING SUN ROCK FESTIVAL』で、今年一番いいライブができたと思ったんです。バンドとして成長してるんだなって実感しました。

PORIN
PORIN

atagi
atagi

Awesome City Clubにとっての「ネクストステージ」とはなにか?

ベスト盤発売というこの機に、「Awesome City Clubとはそもそもなにか」について考えてみたい。ACCは、「架空の都市(Awesome City)の音楽を鳴らすバンド」というコンセプトで始動した。その元を正すと、メンバーの友人であるイラストレーターが架空の街のバンド・Awesome City Clubをイメージして描いたイラストを見て、「本当にこんな街があったらいいね」と言い合ったことがきっかけだ。

つまりアートワークから端を発したバンドであるから、彼らの活動はビジュアルと密接に関係してきた。歴代のジャケットを追って見ていくと、2015年4月にリリースしたメジャーデビューアルバム『Awesome City Tracks』は「Awesome City」の街並みを表現したイラスト、2作目は「Awesome City」の一角に立つビルのイラスト、3作目は街を表現したクリスタルのグラフィック、4作目実際の街の写真……と、作品を出すごとに「架空の街」は実像へと進化している(参考記事:Awesome City Clubインタビュー)。

―今は「Awesome City」の世界が現実に拡張していっているというモード?

atagi:そうですね。『Awesome City Tracks 3』のあたりから「いつやめる?」みたいな話をしてたんですよ。自分たちのやりたいこともできたし、普通のバンド然としてきたこともあって、今が「Tracks」のやめどきかなと。

―『Awesome City Tracks』の4枚をまとめたベストが出るというのは、そこにひと区切り付けて次のステップへ進むという意味合いでしょうか。

atagi:はい。普通のアーティストって、シングルを何枚か出して、それが入ったフルアルバムを出すわけじゃないですか。でも僕らはシングルを出したこともないし、録音物を2度出したことがなくて。要はお客さんに「満を持して」っていう形でモノを提供した経験がないんですよね。だから僕らとしては、ようやく「満を持して」っていうものが作れたかなって。

左から:PORIN、atagi

Awesome City Club『Awesome City Club BEST』ジャケット
Awesome City Club『Awesome City Club BEST』ジャケット(Amazonで見る

「思い入れの強い楽曲を1つ挙げるとしたら?」という質問には、atagiが“アウトサイダー”、PORINが最新曲“ASAYAKE”を挙げた。どちらも、atagiとPORINの男女ボーカルが自由に行き交いながら主旋律を奏で、単声ボーカルでもハーモニーでも楽しませる、ACCならではの楽曲だ。PORINは“ASAYAKE”について「これまでにない直球な曲だし、私たちにもこういう曲ができるんだって。今、私たちにとって一番大事な曲」と、ACCの新たなアンセムが誕生したことを明かした。

新しいアンセムのミュージックビデオを、VRで制作した理由

そんな“ASAYAKE”のVR映像が制作された。「VROOM」とは、アーティストとクリエイターがコラボレーションして360度VR映像をオリジナルで撮り下ろす、auの音楽サービス「うたパス」が企画、提供するコンテンツ。今回の映像では、360度真っ白いスタジオの中に“ASAYAKE”のライブパフォーマンスをするACCがいて、その後ろに視界をやると「ライブを観ているACCがいる」という不思議な空間が広がる。まるでACCが自分のためだけにライブをしてくれているかのようなのバーチャル体験ができる、没入感たっぷりの内容だ。

“ASAYAKE”ミュージックビデオ VRフルバージョンを見る
“ASAYAKE”ミュージックビデオ VRフルバージョンを見る(こちらから

イベント中盤からは、「VROOM」プロデューサーのカタオカセブンを交えて四人でトーク。制作チームがこだわった点は、リアルな人間の目線でVR定点の映像を作ることと、撮影時に実際演奏されたライブ音源をパッケージすることだったそう。

atagi:「CDのほうがいい」って思われないように、かっこいい音を録ることは綿密に打ち合わせしました。

PORIN:“ASAYAKE”自体がライブで聴いてほしい曲なので、ライブを観ているような感覚になれて、ライブ音源で、というVR映像のコンセプトにとてもハマったんです。一発撮りで撮ったのも初めてなので、こういう臨場感あるミュージックビデオができたのは、自分たちの武器になったと思います。

カタオカ:メンバーミーティングの際に、マツザカ(タクミ)くんが「“ASAYAKE”は、僕らの新しいアンセムなんです」と話してくれて、その言葉にある種の決意を感じました。VR映像としては珍しいホワイトバックでメンバーを切り取ることで、余計な装飾のない、新しいVRの音楽世界が作れたと思います。撮影は13時間にも及びましたが、最後までやりきってくれたメンバーに本当に感謝です。

左から:カタオカセブン、PORIN、atagi
左から:カタオカセブン、PORIN、atagi

『NEWTOWN』会場内には、“ASAYAKE”のVR映像が視聴できる「VROOM」のブースが出展していた。来訪者は、振動装置やウーファーが内蔵されている球体状のイス・TELEPODに座り、VRスコープを覗いて映像を体験。感心するように「異空間ライブ体験」を堪能し、興奮した様子で感想を述べていた。没入するあまりTELPODの中でステップを踏む人までいるのを目撃すると、「VROOM」プロジェクトは、これまでのミュージックビデオとは明らかに違う価値観を提示するものであることを感じた。

 
 

『Awesome City Club × VROOMスペシャルトーク&ライブ』終演後には長蛇の列が
『Awesome City Club × VROOMスペシャルトーク&ライブ』終演後には長蛇の列が

atagiとPORINも、ブース内のTELEPODでVR映像を体験した
atagiとPORINも、ブース内のTELEPODでVR映像を体験した

最後に語った、Awesome City Clubが2020年に目指すこと

ミニライブでは、atagiのアコースティックギターとPORINのパーカッションとシンセというミニマムな編成で、ノスタルジックな“青春の胸騒ぎ”と、先のトークでatagiが印象に残っている曲として挙げた“アウトサイダー”を歌唱。そして新曲“ASAYAKE”で伸びやかな歌声が重なり響き合った。

左から:PORIN、atagi

左から:PORIN、atagi

今後の活動について、atagiは「自分たちがやっていることは、小さなアップデートの積み重ね。これからの変化も大きなものじゃなくて、今までと地続きのものだと思う。その中で今回“ASAYAKE”で見出せたように、新たな可能性を表現に織り込んで楽曲にしていきたい」との言葉を残した。また、PORINは「2020年に自分たちのフェスをやるっていう目標があって、それに向けてがんばりますので応援してください」と締めくくり、会場周辺は温かな拍手に包まれた。

音楽、VR、アートなど、さまざまな表現があるフェスをいつかやりたいと構想しているACC。『NEWTOWN』の如く、彼らが本物の「Awesome City」を実現させる日が今から楽しみだ。

イベント情報
『Awesome City Club × VROOMスペシャルトーク&ライブ』

2017年8月20日(日)
会場:東京都 日比谷公園 にれの木広場
出演:
atagi(Awesome City Club)
PORIN(Awesome City Club)
カタオカセブン

サービス情報
うたパス「VROOM」

「特別な空間で、特別な映像体験を」をコンセプトとした、普段決して見ることのできない、アーティスト達の素顔に近づける、auの定額制音楽配信サービス「うたパス」独自の新感覚体験型映像コンテンツです。360度全方位へ自由に視点を動かすことが可能で、まるでその場に自分自身がいるかのような、臨場感溢れる視聴体験をお楽しみ頂けます。また、VRヘッドセットを利用することで、さらに没入感の高い視聴体験を味わうことが可能です。話題のアーティストと最先端のクリエーターが作りあげる『VROOM』は、今後も続々と、アーティストのライブステージや、アーティスト同士のスペシャルコラボセッション等の特別な映像コンテンツの配信を予定しています。「うたパス」アプリをダウンロードすれば、どなたでも無料で「VROOM」をお楽しみ頂けます。Awesome City Club“ASAYAKE”は、2017年9月16日23:59まで配信予定。

リリース情報
Awesome City Club
『Awesome City Club BEST』初回限定盤(CD+DVD)

2017年8月23日(水)発売
価格:4,104円(税込)
VIZL-1217

[CD]
1. ASAYAKE
2. 青春の胸騒ぎ
3. 今夜だけ間違いじゃないことにしてあげる
4. Vampire
5. Don't Think, Feel
6. pray
7. アウトサイダー
8. GOLD
9. Lullaby for TOKYO CITY
10. 涙の上海ナイト
11. 4月のマーチ
12. Lesson
13. Children
[DVD]
『Awesome Talks -One Man Show 2017-(2017. 5.19 at Akasaka BLITZ)』
・Movin'on
・GOLD
・Vampire
・アウトサイダー
・愛ゆえに深度深い
・Sunriseまで
・青春の胸騒ぎ
・It's So Fine
・Don't Think, Feel
・今夜だけ間違いじゃないことにしてあげる
・涙の上海ナイト
・Action!
・“4月のマーチ”PV
・“涙の上海ナイト”PV
・“アウトサイダー”PV
・“GOLD”PV
・“Lullaby for Tokyo City”PV
・“Don't Think, Feel”PV
・“今夜だけ間違いじゃないことにしてあげる”PV
・“青春の胸騒ぎ”PV

Awesome City Club
『Awesome City Club BEST』通常盤(CD)

2017年8月23日(水)発売
価格:3,024円(税込)
VICL-64824

1. ASAYAKE
2. 青春の胸騒ぎ
3. 今夜だけ間違いじゃないことにしてあげる
4. Vampire
5. Don't Think, Feel
6. pray
7. アウトサイダー
8. GOLD
9. Lullaby for TOKYO CITY
10. 涙の上海ナイト
11. 4月のマーチ
12. Lesson
13. Children

イベント情報
『Awesome Talks Acoustic Show 2017』

2017年9月20日(水)
会場:福岡県 the voodoo lounge

2017年9月21日(木)
会場:京都府 磔磔

2017年11月16日(木)
会場:北海道 札幌 BFHホール

『Awesome Talks -Oneman Show 2017-』

2017年10月28日(土)
会場:宮城県 仙台 MACANA

2017年11月2日(木)
会場:広島県 CAVE-BE

2017年11月3日(金)
会場:福岡県 BEAT STATION

2017年11月5日(日)
会場:石川県 金沢 GOLD CREEK

2017年11月12日(日)
会場:香川県 高松 DIME

2017年11月19日(日)
会場:北海道 札幌 CUBE GARDEN

2017年11月24日(金)
会場:愛知県 名古屋 ボトムライン

2017年11月30日(木)
会場:大阪府 味園ユニバース

2017年12月6日(水)
会場:東京 お台場 Zepp Diver City

2017年12月15日(金)
会場:沖縄県 Output

プロフィール
Awesome City Club
Awesome City Club (おーさむ してぃ くらぶ)

2013年春、それぞれ別のバンドで活動していたatagi、モリシー、マツザカタクミ、ユキエにより結成。2014年4月、サポートメンバーだったPORINが正式加入して現在のメンバーとなる。「架空の街 Awesome Cityのサウンドトラック」をテーマに、テン年代のシティポップをRISOKYO からTOKYOに向けて発信する男女混成5人組。2015年、ビクターエンタテインメント内に設立された新レーベル「CONNECTONE(コネクトーン)」より、第一弾新人としてデビュー。2015年4月8日に1stアルバム『Awesome City Tracks』をリリースし、iTunesロックチャートで1位を獲得するなど話題を呼んだ。デビューからコンスタントに2年間で4枚のアルバムをリリースし、2017年8月23日にはキャリア初となる新曲入りベストアルバム『Awesome City Club BEST』をリリース。クラウドファンディングやVRなど最新のテクノロジーを積極的に駆使した活動が各所から注目を集めている。

カタオカセブン (かたおか せぶん)

「VROOM」プロデューサー。2010年UNIVERSAL MUSIC NAYUTAWAVE RECORDS / 現EMI RECORDSより、アーティストとしてメジャーデビュー。アーティスト、音楽プロデューサー兼サラリーマン。



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