「ツアー」以外の旅をともにするのは初めてだというAwesome City Club一行
世界中にあるリスティング先(登録されているお部屋)から選りすぐりの場所に宿泊できる「Airbnb(エアビーアンドビー)」。旅先に暮らすように滞在することで現地の人たちの暮らしや息づかいを感じ、その街を生活者と同じ目線で体験できるのが魅力のサービスだ。新しい旅のスタイルを提案するAirbnbがこの夏、ミュージシャンとコラボレーションし、リスティング先の「おうち」という特別なシチュエーションでライブを行う企画『THE LIVE HOUSE』を始動させた。
前回、長野県を舞台に福耳の面々を招いて実施された同企画(参考記事:福耳が話題のAirbnbで旅体験。普通とは違う出会いとライブをレポ)の次なるゲストは、Awesome City Club。福耳が体験した長野の旅では、リスティング先からライブの生配信が行われたが、今回は3組6名を招待してシークレットライブが披露された。メンバーの自宅に招かれたかのような距離で憧れのアーティストのライブを観る――幸運な機会を手にした6人の観客は、非現実的な時間をどのように楽しんだのか? マツザカタクミ(Ba,Syn,Rap)いわく、ツアー以外でメンバー5人そろっての旅は初めてだったそうだが、Awesome City Club一行が体験した旅とライブはどんなものだったのか? この日の様子を、旅の前後に行ったインタビューとともにレポートする。
ホストがおすすめする場所で、感動の景色や食べ物に遭遇
9月4日、今回の滞在先である香川県三豊市にあるリスティング先を訪れた5人。部屋に入るなり、窓からのぞく荘内半島が一望できる景色に歓声をあげた。
「この部屋は、日常から離れてのんびりしてもらえるよう時計も置いていないんです」とホストは語る。なんでも地域と人、双方にとっての「再生」をテーマに掲げ、この場を運営しているのだとか。たとえばゲストから希望があれば、無人島に移動してBBQを楽しんだり、ここのキッチンを使って地元の人たちが料理をもてなしてくれたりすることもあるそうだ。
あなたにとって旅とは?――そんな質問に、「自分の深層心理にダイブする時間」「体中の空気の入れ替え」とそれぞれ答えていたユキエ(Dr)とPORIN(Vo,Syn)は、窓辺に置かれたハンモックでゆらゆらと早速リラックスムード。
窓から望む荘内半島の島々についてホストから解説を受けたあと、一行は無人島・蔦島に足を運ぶことに。地元のおじさんが持っている小さなフェリーで蔦島に向かう道中、atagi(Vo,Gt)は島のルーツや釣り情報などについて熱心に話を聞いていたようだった。
蔦島に到着するなり、地元の名店「元祖たこ判 小前」で買った「たこ判」を嬉しそうにほおばる。ここはホストが直々にオススメしてくれたお店だ。こういうホストと交流を通じて手に入る情報にこそ、Airbnbの旅の醍醐味があるのかもしれない。
蔦島から戻ると、5人は「日本のウユニ塩湖」と呼ばれるほど景色がきれいな父母ヶ浜でビーチボールを投げ合い、残り少ない夏の空気を満喫する5人の姿が印象的だった。
父母ヶ浜でたわむれるAwesome City Clubの5人。ユキエのInstagramより
「都会の喧騒から離れて大自然に癒されたり、忘れかけていた感覚を取り戻せます」。旅から受け取るインスピレーションについて、事前のインタビューでこう答えていたのはPORIN。8月にキャリア初となるベストアルバム『Awesome City Club BEST』をリリースし、さらにイベントやフェスへの出演へと絶え間なく活動を続けてきたAwesome City Club。彼らにとって今回の企画は、もしかしたら夏休みのような時間だったのかもしれない。
仲間のいつもと違った表情が垣間見える、親密な旅の時間
「海も近くて、自然もたくさんあって、普段はコンクリートが多い場所に住んでいるので、新鮮なインスピレーションが湧いてきそうです」と語っていたモリシー(Gt,Syn)だが、地元の名所を巡り、メンバー同士の時間を過ごした彼らにとって、この旅は実際にはどのような時間だったのだろうか?
マツザカ:普段メンバーと集合写真を撮る機会も多いけど、そのときにしている笑顔とは違うもっと素の表情をしていたんですよね。Instagramのコメントで「いい写真ですね」とか「青春っぽい」と言われて小っ恥ずかしさもありつつ、きっとこういうところに来ないと見せない表情が出ているなって。
ユキエ:Awesome City Clubのメンバーという「タグ」が外れた状態でのメンバーそれぞれの顔を見ることができたのが嬉しかったです。1年に1~2回はこういう機会を設けるのもありかもしれないですね。
「暮らすように旅する」ということをコンセプトにした、Airbnbの旅。「暮らし」と「旅」の中間といえるような時間は、2人が語るように、ただ疲れを癒すだけでも、単に新たな刺激を得るだけでもない、仲間の普段見せない表情を垣間見ることができる親密で特別なものだったようだ。
5人はその後、街を見下ろせる高台にある神社まで登った。階段を登りきり、「せーの」というかけ声を合図にメンバーで同時に振り返る。そして同時に、街を一望できる景色に声があがる。黙っていても仲間と感覚を共有できるなんて、なんと素敵なことだろう。
一行は三豊市の名産であるお酢の醸造所へ。この醸造所を営む一家の息子が描いたというイラスト入りの仁尾酢をプレゼントしてもらい、そのほっこりする可愛らしいデザインに思わず頬をゆるめていた。
そうこうしているうちに日が暮れきた。モリシーが「友達とか家族に『ちょっと聴いてよ』と気軽な感じで演奏した不思議な感覚になった」と感想を口にしたライブは、いつものライブとどう違ったのか? 3組6名の幸運な観客を招いてのライブがいよいよはじまる。
観客と一体になったムードで、荘内半島の景色をバックにおうちライブがスタート
電飾とキャンドルに囲まれ、小さなキャンピングチェアに腰かけたお客さんが、彼らの登場を今か今かと待っている。そこにメンバーが登場し、あたたかな拍手で6人の観客が彼らを迎え入れる。
モリシー:Awesome City Clubが住んでいる家に来てもらったように、普段生活している僕たちのテンションがそのまま出るライブになるといいですね。今回、僕らもプライベートでポロっと来る感覚なので、見に来た人と同じ目線で楽しめるかと。編成もアコースティックですし、MCもゆっくりみんなと会話するようにできたらいいなと思います。
ライブハウスではなく、旅先の一軒家で、ごく限られた人の前で演奏するというこの日のライブは、事前インタビューでモリシーがこう答えたように、お客さんとの物理的な距離の近さ以上に親しげなムードの漂うものだった。
「近いね」「僕らの家へようこそ(笑)」といったMCを挟みながら、ライブがスタート。ベースのマツザカのみミニアンプにつなぎ、他のメンバーはそれぞれ手持ちの楽器をアコースティックで鳴らす。前列のatagiはアコースティックギターを、PORINはシェイカーを手にし、後列はベースのマツザカとカホンを担当するユキエ、そしてコードとリードギターを奏でるモリシーという並び。
1曲目に演奏されたのは“青春の胸騒ぎ”。お客さんがハンドクラップしながら会場の空気を暖めていく。まるで一緒に音楽を奏でているような雰囲気だ。
2曲目に披露された“4月のマーチ”では、PORINが鉄筋を奏でながら歌う。いつもと異なるフォーキーなアレンジと、メンバー一同のコーラスが印象的だった。お客さんも椅子に座りながら、体を揺らしたりして音楽に酔いしれていた。
3曲目はシンセのフレーズが印象的な“Vampire”、そして4曲目には“Don't Think, Feel”が披露された。楽しげな歌声と、メンバーのコーラスのかけ合いが気持ちよく風に舞う。
最後に披露された“ASAYAKE”が演奏される頃には、あたりは夜の景色に移り変わっていた。先ほどまでのぞいていた夕日が水平線に沈んでいく。Awesome City Clubのここまでの歩みを総括するような歌詞と、高らかな宣誓のごとく鳴り渡るリズムやメロディーが、この日ばかりは夕方の景色に馴染み、どこまでも響いているのが印象的だった。
触れられるほどの距離でライブを堪能した、幸運な6人に感想を訊く
最後はメンバーとお客さんで乾杯。昼間に訪れた醸造所でもらった仁尾酢で割ったお酒を飲み、和気あいあいと特別な時間の余韻に浸っていた。終演後、この日のライブに招待されたお客さんたちに感想を訊くことができた。この日のパフォーマンスを観た6人は、Airbnbに登録されているリスティング先に泊まるのだという。自らも、「旅をして音楽を聴く」という体験を経たからこその感情もあったようだ。
秋田から訪れたという20代の男女は、「同じ香川に行くにしても、いつもの旅だったらこんな素敵な場所を知り得なかったです。三豊市の銘産や浦島太郎の逸話も、Awesome City Clubのメンバーや地元の方とお話できたから知ることができました。同じ旅をする者同士としてメンバーのみなさんとフラットに交流できたことが感慨深かったです」「今晩、香川の2人組の方たちと同じリスティング先に泊まるので、明日までいろんな情報を交換できたら嬉しい」とそれぞれ語ってくれた。
さらに、旅の感想について「こんな非現実的な空間で、非現実的なことを体験できて、家に帰ったら『夢みたい』って思いそうです」「この時間がずっと続けばいいなと思いました」と話していた。
香川県内から訪れた20代の女性は「音楽だけじゃなくて、人となりや息づかいが伝わってきたライブでした。こういう人たちが思いを込めて作っているから、素敵な音楽ができるのだとわかって感無量です」と話す。一緒に来ていた男性は「遠い存在だと思っていた人が目の前で演奏していて、まるで絵を見ているような気持ちだったけど、旅先ならではの自然の音も聞こえてきて不思議な現実感があった」と語っていた。
またこの女性は、三豊市のお酢は香川の銘産品であるとメンバーから聞いたことを印象深げに話してくれた。「自分が生活する県でも知らないことがたくさんある。東京から訪れたメンバーが現地の方たちとの交流で仕入れた情報を、同じ県内で暮らす私に教えてくれたのが新鮮でした」。
親子で来たという2人は、「今回生声で演奏を披露するのは、初の試みだったそうですが、普通のライブハウスでは聴けないような、小さい音、細かな音を聴くことができて嬉しかったです。またこのロケーションだからこそ、時間の移ろいとともに音楽を感じられて、景色と音楽が一体になって溶けるような感覚を得ました」と感想を述べてくれた。
興奮冷めやらぬライブ後のメンバーにインタビュー。Airbnbを使った旅を経て思うことは?
自宅にお客さんを招き入れたような距離感とムードで行われたこの日のライブ。「旅先で音楽を奏でる」という非日常体験のなかで彼らはどんな感想を抱いたのだろうか。
マツザカ:マイクを通さず生声で、しかも野外という特殊な環境で演奏したのは初めてでした。大自然の虫の音とかを聞きながら、今日ここでしかやれないライブができたと思います。
PORIN:お客さんとの距離が近くて、あんなに表情が見える距離感でやったことがなかったので不安もありましたが、リラックスした雰囲気でできてよかったです。
ユキエ:生音で演奏したことで、「みんなこういう音を出していたんだな」と発見した部分もあって、より音楽を感じながらやれました。
また今回、普段のツアーとは違うメンバー同士のゆったりとした旅の時間を過ごしたことは、以後の音楽制作にも影響を与えそうだと語っていた。どのようなインスピレーションがもたらされ、彼らのなかにどのような化学反応が起きたのだろうか。
モリシー:“ASAYAKE”や“GOLD”という曲は、『FUJI ROCK FESTIVAL』でArcade Fireを観たときの刺激的な光景があって、感情が吹き出して書いた曲なのですが、今回もかなり刺激的で、素晴らしい光景がいくつも見えました。東京に帰ってから頭の中にあるものをこねりくりまわしたいですね。すぐに楽曲として出てくるような気がしていて、ワクワクしています。
マツザカ:いろんな街の景色を歌にしてきたこともあって、この街にはこの街のストーリーがあるということがわかりましたね。普段歌詞は旅先のホテルの狭い部屋で書くことが多いんですけど、今回見たものはナチュラルな街の景色だったので、自然と言葉が出てきそうな気がしています。
atagi:僕もここで見た景色や普段の生活では得られない感情が、ノスタルジーとして何年後かに吹き出してきそうな気がしますね。自分の作品の糧になりそう。
話を聞く限り今回の旅とライブは、メンバーにとってツアーで各地を回り演奏するのとはずいぶんと勝手が異なったようだ。現地のカルチャーに触れて、現地の人たちでしか知り得ない街情報などを仕入れ、思い思いの時間を過ごす――そんなAirbnbでしか得られない旅の時間と経験は、アーティストだけではなく、きっと私たちにとっても同じように豊かなものとなるはず。Airbnbが気に入ったマツザカは、今度休暇で海外に旅する際にも使うことに決めたという。
マツザカ:観光地ではない場所にこそ「街の息づかい」があって、クリエイターたちが集っていて文化が生まれる空気を知れるはず。Airbnbの旅が今から楽しみです。
今回の親密な旅を経て、彼らはどのような楽曲を作るのか? 東京に帰り、この時間を反芻した彼らがどのように音楽として表現していくのか? ベストアルバムをリリースし、バンドの第2章に進もうとするタイミングで、5人は再び原点に立ち返るようにお互いの関係を確認したことだろう。
Airbnbの「暮らすような旅」を体験すると、観光者としてではなく、現地に「生活する人」の視点で物事を考えることができる。それにホストや現地の人とのやりとりを経て、その場所に自らを馴染ませることで湧き上がる感情は、従来の旅行では得られないものだろう。
今回の旅を振り返るとAwesome City Clubの5人が「メンバー同士」ではなく「音楽好きの仲間同士」として、旅の時間を満喫しているようだった。きっと私たちがAirbnbで旅する際も、肩書きや日常生活における課題などを忘れ、自らを解放することで、はじめて見えてくる景色や親密さがあるはず。Airbnbの旅には、自らを再生させるような、ここにしかない特別な感情を味わうチャンスに満ちているのだ。
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- Awesome City Club (おーさむ してぃ くらぶ)
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2013年春、それぞれ別のバンドで活動していたatagi、モリシー、マツザカタクミ、ユキエにより結成。2014年4月、サポートメンバーだったPORINが正式加入して現在のメンバーとなる。「架空の街 Awesome Cityのサウンドトラック」をテーマに、テン年代のシティポップをRISOKYO からTOKYOに向けて発信する男女混成5人組。2015年、ビクターエンタテインメント内に設立された新レーベル「CONNECTONE(コネクトーン)」より、第一弾新人としてデビュー。2015年4月8日に1stアルバム『Awesome City Tracks』をリリースし、iTunesロックチャートで1位を獲得するなど話題を呼んだ。デビューからコンスタントに2年間で4枚のアルバムをリリースし、2017年8月23日にはキャリア初となる新曲入りベストアルバム『Awesome City Club BEST』をリリース。クラウドファンディングやVRなど最新のテクノロジーを積極的に駆使した活動が各所から注目を集めている。
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