『デザインあ展』が科学未来館で開催。体験型作品も多数の会場内をレポート

22万人動員の展覧会が5年ぶりに開催

NHK Eテレの番組『デザインあ』から生まれた展覧会『デザインあ展 in TOKYO』が、7月19日から東京・お台場の日本科学未来館で開催。7月18日に報道陣向けの内覧会が開催された。

子供たちにデザイン的思考を伝えるNHK Eテレの教育番組『デザインあ』のコンセプトをインタラクティブに体感できる『デザインあ展』。2013年に東京・六本木の21_21 DESIGN SIGHTで開催され22万人を動員した前回展から作品を新たにし、様々なテーマを掘り下げていく。

デザインと関わりのないものは何一つない

内覧会には展覧会総合ディレクターの佐藤卓、映像ディレクターを務める中村勇吾(tha ltd.)、音楽ディレクターを務める小山田圭吾が登壇。

佐藤卓は自身が総合指導を務める『デザインあ』の番組について「デザインと関わりのないものは何一つない」という考え方に基づいて番組制作をしていると明かし、「今回の展覧会が全ての方々にデザインについて考えていただくきっかけになればありがたい」と話す。

『デザインあ展 in TOKYO』内覧会に登壇した佐藤卓
『デザインあ展 in TOKYO』内覧会に登壇した佐藤卓

また日本科学未来館での開催については「科学未来館で開催できることを大変嬉しく思っている。全ての物事がデザインと関わっていると申し上げたが、当然科学もデザインと関わりがあるということ。科学未来館そのものが科学と多くの人を繋ぐデザインともいえる」「今回の展覧会でいろんなところのデザインが潜んでいることに気づいてもらえれば」と述べた。

中村勇吾「自分なりに自由に見て、自由に感じて」、音楽ディレクターで小山田圭吾も参加

番組で映像監修を務める中村勇吾は「『デザインあ』という番組自体は、番組が子供たちにメッセージを伝えるというよりは、見てる人にそこから何かを見出してもらうということを主眼としている」とし、「展覧会でも詳しい説明や展示の見方が書いてあるということはほとんどない。色んな謎のオブジェが点在していて、それを見た子供たちが自由にそこから何かを感じたり、見出したりしてほしい」「来ていただいた人には自分なりに自由に見て、自由に感じてほしい」と明かした。

『デザインあ展 in TOKYO』内覧会に登壇した中村勇吾
『デザインあ展 in TOKYO』内覧会に登壇した中村勇吾

番組の全ての楽曲を制作している小山田圭吾は「さきほど卓さんがおっしゃっていましたが、音楽も時間軸や空間を使った聴覚に向けてのデザインということを意識しながら曲を作っている。昨日初めて展示を見たが、楽しい面白い展示だと思います。どうぞよろしくお願いします」と挨拶した。

『デザインあ展 in TOKYO』内覧会に登壇した小山田圭吾
『デザインあ展 in TOKYO』内覧会に登壇した小山田圭吾

『デザインあ展 in TOKYO』内覧会に登壇した中村勇吾、佐藤卓、小山田圭吾

「お弁当」や「からだ」「なまえ」を観察する「観察のへや」

会場は「観察のへや」「体感のへや」「概念のへや」の3つのパートで構成。「観察のへや」では身の回りにあるモノやコトから、「お弁当」「容器」「マーク」「なまえ」「からだ」の5つのテーマを取り上げ、そのテーマがデザインによってどのように人々と関わっているのかを「みる」「考える」「つくる」の3つのステップで紹介する。

『デザインあ展 in TOKYO』会場風景
『デザインあ展 in TOKYO』会場風景

「お弁当」のセクションに並ぶのは、クワクボリョウタと山口レイコによるアートユニット・パーフェクトロンの作品。4種の弁当と食材のつめられ方に焦点を当てる『つめられたもの』、調理の仕方や手順で姿を変える「卵」にフィーチャーし、殻に入った状態から変化していく様を観察できる『たまごの変身』、弁当の中に入ることができる『梅干しのきもち』といった作品が展示される。

弁当の食材のつめられ方に焦点を当てた作品『つめられたもの』。様々な食材が並ぶ
弁当の食材のつめられ方に焦点を当てた作品『つめられたもの』。様々な食材が並ぶ

調理された卵の変化を観察する『たまごの変身』
調理された卵の変化を観察する『たまごの変身』

岡崎智弘が手掛ける「マーク」のセクションでは、身の回りにある様々なマークやシンボルに光を当てる。トイレのマークでおなじみの赤と青の男性像・女性像が並ぶ『抽象度のオブジェ』では、リアルな女性と男性の人形が、段々と抽象化され、最後には顔のないシンボルになる。人の要素をどれだけ残し、どれだけ省略するのか、それによって伝わり方がどのように異なるのかを体感することができる。

男女の人形がだんだんと抽象化されていく『抽象度のオブジェ』
男女の人形がだんだんと抽象化されていく『抽象度のオブジェ』

中身の「出てくる瞬間」や全国8万の「名字」に注目した作品も

「容器」のセクションには、ゾートロープと呼ばれるアニメーションの手法を使って、ペットボトルや醤油さしといった容器の造形の共通点や違いを見せるplaplax+パンダグラフの『いれもの二十面相』や、容器に入っている中身の「出てくる瞬間」を作品にした『なかみのかたち』、パーツを組み合わせて遊べる『器のモンタージュ』が展示。

アニメーションの手法を用いて容器のかたちの違いを表現する『いれもの二十面相』
アニメーションの手法を用いて容器のかたちの違いを表現する『いれもの二十面相』

「からだ」のセクションには、手の動きを映した映像と多彩な擬音で様々な道具の形やそれを使う際の手の動きを表す野村律子の作品『あの手 この手』が登場。また体験型作品『○回の動作』は、モニターの前で手を叩くと、叩いた回数の動作でできる動きが映像に映し出される作品だ。

道具の形と手の動きの関係を探る『あの手 この手』
道具の形と手の動きの関係を探る『あの手 この手』

「観察のへや」の最後のセクション「なまえ」では、全国約8万の名字を並べ、その名字の人口に比例したサイズのフォントで並べた『全国名字かずくらべ』、街にある看板の文字を集め、フォント化して「あ」の文字を描く『かんばん「あ」』、自分の名前を画面に入力すると、名前を構成する文字で「顔」ができる『名は顔をあらわす』といった作品を紹介する。

約8万の名字が、名前の人口に比例したサイズで並ぶ『全国名字かずくらべ』
約8万の名字が、名前の人口に比例したサイズで並ぶ『全国名字かずくらべ』

街にある看板の文字を集めて「あ」の文字を作る『かんばん「あ」
街にある看板の文字を集めて「あ」の文字を作る『かんばん「あ」』

小山田圭吾による音楽と中村勇吾らの映像を360°体感する「体感のへや」

「体感のへや」では小山田圭吾による番組オリジナルソングや音楽と中村勇吾らによる映像がシンクロし、展示室内の4面のスクリーンに映し出される。番組のオリジナルコーナーを360°の映像作品化したコーナーだ。

番組のテーマソングにあわせて様々な「あ」の文字が映し出される『「あ」のテーマ』や、ものの成り立ちを表現する番組のコーナーをもとに、色々なものが「解散」する様子を描いた『解散!』など、4つの作品で構成される。

「体感のへや」展示風景。展示室の四方の壁面全体に映像が映し出される

「体感のへや」展示風景。展示室の四方の壁面全体に映像が映し出される
「体感のへや」展示風景。展示室の四方の壁面全体に映像が映し出される

時間や空間、物事の仕組みを学ぶ「概念のへや」

「概念のへや」は「じかん」「くうかん」「しくみ」の3つのテーマから成る。場や時の流れ、人の動きをデザインを通してどのように感じているのかを、体験型作品を含む多彩な作品を通して学ぶことができる。

形のない「時間」という概念を言葉と音と動きで表現する細金卓矢の映像インスタレーション『じかんがくる』では小山田圭吾が音楽を担当。さらにトイレなどの空間を引き伸ばし、いつもの場所をいつもと違う長さに変えてみせたplaplax+齋藤雄介の『ト~~イレ』、仕組みがかみ合わない世界を回転寿司をモチーフに表現したパーフェクトロン+柴田大平の『しくみ寿司』などユーモラスな作品も多数並ぶ。

「じかん」のセクションの展示風景
「じかん」のセクションの展示風景

仕組みがかみ合わない世界を回転寿司をモチーフに表現した『しくみ寿司』
仕組みがかみ合わない世界を回転寿司をモチーフに表現した『しくみ寿司』

身の回りにある様々なモノやコトへの新たな視点を獲得し、複雑な物事への課題解決に向けたデザインマインドを感じることのできる本展。体験型作品も多く、大人も子供も楽しめる夏休みシーズン注目の展覧会となりそうだ。

『デザインあ展 in TOKYO』は7月19日から10月18日まで日本科学未来館で開催。



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