奇跡的なステージを生み続ける、史上最高級のジャズの祭典が今年も東京で開催
スイスにあるレマン湖畔の街・モントルーで1967年から毎年開催されている史上最高のジャズフェスティバルのひとつ『モントルー・ジャズ・フェスティバル』。ピアニストのレイ・ブライアントが急遽代役として出演しながらも生涯屈指の演奏をしたことや、ビル・エヴァンスのステージなど、このフェスティバルでは奇跡的な名演がいくつも生まれている。マイルス・デイヴィス生誕90年のメモリアルイヤーの今年にかけて語るなら、彼の生前最後の大舞台が『モントルー・ジャズ・フェスティバル』だった事実は欠かすことはできない。
また、同フェスティバルは設立当初から自由な雰囲気が売りでもあった。「ジャズとは、音楽のスタイルというよりは、スピリットみたいなもの。ジャズのカルチャーはあっても、ジャズという音楽スタイルというのはないと思っている」とフェスティバル最高責任者のマシュー・ジャトンが語るように、形式としてのジャズに捉われずに、様々なジャンルの素晴らしいアーティストを招聘してきた。マーヴィン・ゲイやSantana、D'Angeloにジェイムス・ブレイク、今年はアノーニやGoGo Penguinなど、その時代を代表するアーティストがステージに上がっている。
ジャズの祭典で味わうテクノの上に弾むピアノ、ブラジル音楽界のレジェンドや屈指のサンバシンガーの来日
そんなモントルーの意識を受け継ぎ、日本で開催されるのが『モントルー・ジャズ・フェスティバル・ジャパン』だ。昨年の大友克洋に続き、今年のキービジュアルを手掛けたのは世界的ファッションデザイナーの山本耀司。最大の目玉はその先鋭的なサウンドが世界中で幾度となく再評価されるブラジル音楽界のレジェンド、カエターノ・ヴェローソの来日だろう。そして、同日には現代ブラジル屈指のサンバシンガー、テレーザ・クリスチーナもライブを行い、ブラジル音楽ファンは見逃せない一日となっている。
もともとスイスでの『モントルー・ジャズ・フェスティバル』はブラジル音楽と関係が深く、ブラジル音楽をジャズシーンに発信する役割を担ったジャズフェスティバルでもあった。
『モントルー・ジャズ・フェスティバル・ジャパン 2015』の様子 / 撮影:青木勇策
また、初日からフランチェスコ・トリスターノ presents ピアノリグ featuring デリック・メイ、ヘンリク・シュワルツ featuring 板橋文夫&Kuniyukiが、2日目にはジャイルス・ピーターソン presents SONZEIRA LIVE BANDなどのクロスオーバーなプロジェクトが並ぶのは実にモントルーらしい。この三組に共通するのはエレクトロニックミュージックとミュージシャンの生演奏のコンビネーションの可能性を見せてくれるスリリングなプロジェクトだということだろうか。
フランチェスコ・トリスターノ presents ピアノリグ featuring デリック・メイ
フランチェスコ・トリスターノ presents ピアノリグ featuring デリック・メイとヘンリク・シュワルツ featuring 板橋文夫&Kuniyukiに関しては、テクノのミニマルなビートの上でピアニストが躍動する刺激的なステージを見ることができるだろう。
ブラジル音楽の枠に収まらない奇才が集結するジャイルス・ピーターソン presents SONZEIRA LIVE BAND
一方で、ジャイルス・ピーターソン presents SONZEIRA LIVE BANDは少し毛色が違う。もともと、ジャイルス・ピーターソンがアルバム『Brasil Bam Bam Bam』(2014年発表)のために結成したプロジェクト、SONZEIRAをこの『モントルー・ジャズ・フェスティバル』のために再結成させたものだ。『Brasil Bam Bam Bam』は世代を問わず集まったブラジルのミュージシャンのサウンドを、UK経由のプロダクションチームがプロデュースする形で、サンバやボサノバ、MPB、バイレファンキなどとテクノやハウスやビートミュージック、トラップやエレクトロニカ、ダブなどを融合させた先進的なブラジリアンダンスミュージックアルバムだった。
そんな『Brasil Bam Bam Bam』のサウンドをライブの場で再構築するために集められたSONZEIRA LIVE BANDの中でも、今回最も注目すべきはブラジルのシンガーソングライター、マルコス・ヴァーリの参加だろう。シンガーソングライターという立場を超えて、その音響的でストレンジなサウンドがポストロックやエレクトロニカ、ヒップホップのシーンから再評価されたり、USでレコーディングしたAOR / シティーポップマナーな作品の洗練されたサウンドが近年も人気を博していたりとブラジル音楽の先鋭的なイメージを担ってきた一人だ。
SONZEIRA LIVE BANDにはマルコス・ヴァーリを筆頭に、サンバにロック、ヒップホップ、レゲエ、ジャズなどを融合させたオルタナティブなサンバファンクのグループ、Farofa Cariocaのリーダーのガブリエル・モウラや、ブラジル発のポストロック / エレクトロニカ的なユニット、MORENO+2のメンバーでもあるカシンなど、ブラジル音楽の枠に収まらないサウンドを作り続けてきた奇才たちが集結している。
ブラジル伝統の祝祭性とサウダージ×現代のリズムが生み出す「これまでに聴いたことのない音楽」
そこにダニーロ・アンドラーヂやゼロと言ったブラジル屈指のミュージシャン、さらに『リオデジャネイロオリンピック』の開会式のステージにも立ったシンガーのマイーラ・フレイタスなど実力派が加わる。SONZEIRA LIVE BANDのパフォーマンスからは、『Brasil Bam Bam Bam』でも聴かれたようなサンバやボサノバのようなブラジルの伝統的な音楽が持っている祝祭性やサウダージに、現代的な音響性やリズムスタイルなどが入り混じり、懐かしさと新しさが共存するサウンドが聴かれることだろう。
卓越したミュージシャン達が生み出すサンバのサウンドがプロデューサーの手により現在のエレクトロニックミュージックの感覚を持つ新たなサウンドに生まれ変わるさまは実に刺激的だ。
去年の『モントルー・ジャズ・フェスティバル・ジャパン』では、シャソールやモッキーがこれまでに聴いたことがないようなオリジナルな音楽を披露してくれたが、今年のモントルーではフランチェスコ・トリスターノやヘンリク・シュワルツ、SONZEIRA LIVE BANDといったアーティストがその役割を担ってくれるはずだ。
- イベント情報
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- 『モントルー・ジャズ・フェスティバル・ジャパン 2016』
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2016年10月7日(金)~10月9日(日)
会場:東京都 恵比寿ザ・ガーデンホール、代官山 UNIT
出演:
カエターノ・ヴェローゾ
ジャイルス・ピーターソン
Gilles Peterson presents Sonzeira Live Band
須永辰緒
テレーザ・クリスチーナ
ピート・ジョセフ
Francesco Tristano presents p:anorig feat. Derrick May
Henrik Schwarz featuring Fumio Itabashi & Kuniyuki
松浦俊夫
METAFIVE
メラニー・デ・ビアシオ
八代亜紀&クリヤ・マコト・クインテット
Lulu Gainsbourg featuring Ara Starck
料金:
前売 10月7日券9,000円 10月8日券10,000円 10月9日券13,000円
当日 10月7日券10,000円 10月8日券11,000円 10月9日券14,000円
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- 『Montreux Jazz LAB』
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2016年10月7日(金)OPEN / START 23:00
会場:東京都 代官山 UNIT
出演:
Call Super(DJ)
Juju & Jordash(ライブ)
AKIKO KIYAMA(ライブ)
DJ PI-GE(DJ)
DJ NOA(DJ)
KAORU INOUE(DJ)
XTAL(DJ)
料金:前売3,500円 当日4,000円2016年10月8日(土)OPEN / START 23:00
会場:東京都 代官山 UNIT
出演:
Oskar Offermann(DJ)
AL/VE (Ohm Hourani and Dominique Fils-Aimé)(ライブ)
STEREOCiTI(DJ)
So Inagawa(ライブ)
尾川雄介(DJ)
沖野修也(DJ)
DJ MARCY(DJ)
ALYN(DJ)
EZ(DJ)
CHIDA(DJ)
DJ MAAR(DJ)
You Forgot(DJ)
料金:前売3,500円 当日4,000円※『モントルー・ジャズ・フェスティバル ジャパン2016』チケット購入者は3,000円で入場可能。恵比寿ザ・ガーデンホールご入場時のチケット半券、及び購入メールの提示が必要。
※未就学児童入場不可
※要顔写真付身分証明書
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